はじめに
これを読んでいる人が、ぼくのことをどれくらい知っているのかわからないけど、このエントリを読むにはまず以下の3点を知っておいてほしい。
- ぼくはソフトウェアエンジニアで、2017年の4月から バフェット・コードというサービスを作り始め、2019年に大学の友人と起業、現在に至る。
- 起業を理由に、当時働いていた株式会社メルカリを退職した後も2024年3月まで、週1の契約社員として開発業務を継続。
- メルカリをようやく完全に辞めた3ヶ月後1、さくらインターネット株式会社でこれまた週1で業務委託を開始、今も継続中。
当然っちゃ当然だが、ぼくは今バフェット・コードでフルタイムで働いており、事実上のぼくは定常的に週6で稼働していることになる。
なお、以後このエントリでは"週に1度の業務委託での開発"を「バイト」と呼ぶことにする。 これは、ぼくのGoogleカレンダーの登録時のタイトルが「メルカリでバイト」「さくらでバイト」であるからで、世間一般では「副業」と呼ぶのが多分正しいのはぼくも知っているし、この呼び方が決してぼくの責任感の欠如によるものではないことを明記しておく。
書き始めたら意外と長くなりそうなので、具体的なバイトのお仕事内容は後編で書くことにして、前編では、ぼくのバイトのモチベーションについて書いていきたい。
バイトのモチベーション
当然ながら、起業には相応のリスクが伴う。"起業のリスク"というよりは、"ちゃんとした会社を退社して、わけのわからない零細企業に転職するリスク"と言ったほうが正しいかもしれない。2019年当時ぼくが感じた不安は、転職先の創業者に自分が含まれているかどうかとは全く関係ないリスクだったからだ。 そして、バイトのモチベーションがそのリスクヘッジである、ということは2019年の当時も現在も基本的に全く変わっていない。
で、具体的にはどんなリスクがあるのか、というと
- 経済的なリスク
- エンジニアキャリアのリスク
の2つだ。
経済的なリスク
2019年の起業当時、バフェット・コードは1回目のクラウドファンディングで有料機能の開発資金を調達していた頃だ。リターンで1年分の有料機能を前売りしてしまっていたので、「収益モデルを確立した」というにはちょっと気が早い状況だった。
ぼくが転職を決意したのは、このクラウドファンディングが成功し有料機能がリリースされた後だったが、それでも経済的な不安がなかったと言ったら嘘になる。バイトはそのリスクヘッジとして機能していた。
エンジニアキャリアのリスク
これはぼくが割と特殊なタイプのソフトウェアエンジニアだったことが大きく関係している。ぼくは、いつからか「データエンジニアリング」と呼ばれるようになった、アドテクをルーツに持つ「大量イベントログをリアルタイム / バッチで処理してデータパイプラインを構築する」のを専門にしてきたエンジニアだ。
現在のデータエンジニアリングのデファクトスタンダードとなっているのは、次のような技術スタックだ。
- 大規模データを分散環境で並列処理するプログラミングモデル "MapReduce" (Hadoop, Spark, Flink, Beam, etc.)
- Schema on Read と I/O 最適化のためのファイルフォーマット (Parquet, ORC, Avro)
- ワークフローのオーケストレーション (Airflow, Argo Workflows)
- バッチとストリームの統合モデル (Unified Model / Unified API) 2
これらは、もとをたどれば「指数関数的に肥大化する広告ログを効率的に処理する」ために進化してきたもので、ぼく自身もメルカリに転職する前は Yahoo! JAPAN の広告ログと格闘していたし、メルカリでは
みたいなことをやっていた。
この領域の面白さは、サービス(事業)の方向性やユーザー層に左右されにくく、純粋に技術そのものにフォーカスできる点にある。一方で、こうした大規模分散処理が必要になるのは、莫大なトラフィックを抱える一部の巨大サービスに限られる。そして当然、駆け出しのスタートアップであるバフェット・コードはそうではない。
つまり、この転職は、それまで積み上げてきた技術的な強みを活かす場を失い、この先のキャリアの方向が不透明になるリスクを受け入れることを意味していた。
バイトを続ける理由
起業には「お金がなくなるリスク」と「キャリアが途切れるリスク」がある。 バイトはそのどちらにも効くリスクヘッジだった。 今となってはお金のリスクはだいぶ小さいけれど、それでも続けているのは、キャリアの面で得るものが大きいからだ。
データエンジニアとしてのキャリアを続けられる
- 現在も、週1とはいえApache Iceberg、Apache Kafkaに触れ続けることで、専門性をそれなりに保てている(はず)3。
- 現場の設計方針やチームのやり取りに触れることで、技術トレンドの感覚を維持できる。
技術検証に時間をかけられる環境に助けられる
- スタートアップでは深い技術検証に時間を割くのが難しく、実績のある(成熟した)技術に頼りがちになる。
- 大きな会社では、新しい技術や仕組みの導入が常に進んでいて、その検証プロセスに立ち会える。
シンプルに、いい気分転換になる
- 本業とは違う言語や開発環境で、まったく別のサービスを作ることで、どちらも飽きずに開発を続けられる。
- 異なる技術領域での設計や実装を経験することで、アプローチの幅が広がる。
ということで、ここまででバイトのモチベーションについて書いた。 前編では良いことばかり書いたので、後編では、具体的なお仕事内容の他に、大変なこととか、気をつけていることについて書いていきたい。
最後に、2019年のでんぱ組.incについて
2019年について語るなら、でんぱ組.incについて触れないわけにはいかない。この年は結果的に、グループにとって大きな転換点となった。
1月7日のねむきゅん卒業に始まり、9月18日にはみりんちゃんの結婚発表。翌2020年は新型コロナウイルスの影響ですべてのライブが中止4。ライブ活動再開後の2021年2月の2daysでえいたそが卒業し、10人体制へと移行していく。
正直な話、2019年にはぼくはでんぱ組.incの現場からだいぶ離れていて、ねむきゅん卒業の武道館が2年ぶりくらいのワンマンライブ参戦だったのだが、そんなぼくでも突然の10人体制の衝撃は大きく、受け入れるのに時間がかかった。最終的に、副業をきっかけにでんぱ組.inc熱が再燃、2024年に久しぶりにみりんちゃんとチェキを撮り、そして"でんぱ組.inc THE ENDING"現地参戦に至ることになるのだが、そのお話はまた後編で。
ねむきゅん卒業ソング『絢爛マイユース』がものすごく名曲なので、今日はこの曲でお別れです。